-STORY-物語 始まりの書 十二章 王の強奪 ep.9

何が目的か…大体は理解できる…
「お前はまだ、あの書に従っているんだな?」
彼女は笑いながら答える…
「そうだよ。 私はね、あの書に書かれている事を自分の意思でするの」
「何故だ? 書に従う事に何の意味が在ると言うのだ?」
再び笑いながら、何の躊躇いも無く、彼女は答える…
「意味なんて、初めから無いんだよ。 あの書は此処に存在していないの。 これはあくまでも私の本来の意思。 私は『王』という名の統率者を作り出す為に貴方に協力する。 その為に羅刹、虎龍、戦鬼八神、零、夢幻を作り、育てる。 零を捕まえたくても貴方に制止される。 虎龍と羅刹を助ける為に貴方と戦鬼八神を瑠羅の元へ向かわせる。 貴方と別れる。 エクスと取引して零の記憶を戻す。 再び貴方に協力する。 これは全て、私の意思」
長々と語り通したな…
「虎龍をお前はどうするつもりなんだ?」
ずっと考えていた… 何故虎龍に特性を与えた? 何故俺を欺いた?
「……瑠羅はあの子の特性を利用して、王を作ろうとする。 コピー能力、それは全てを纏める力。 カリスマ能力、それは他者を従える力。 不老感染の呪い、それは友を亡くさない力」
不老……感染…だと!?
「お前…正気か!? 不老の呪いは『殺されなければ死ねない』呪いだぞ? それを他者に感染させるなんて…」
「不老感染はね、彼と共に生きたいと思った者が感染する呪い。 彼と共に永遠の生を願う者だけが、その権利を得る。 要するに…彼等の願いを叶える道具って事」
「条件が曖昧過ぎないか?」
「大丈夫だよ……瑠羅に改造されない限りはね…」
……そうだよな…瑠羅に改造されたら…
「ってぇぃ!!! 瑠羅に思いっきり改造されるんじゃないか!?」
「瑠羅は無い物を作るのには相応の時間が掛かるんだよ? 改造する時間なんて無い無い」
そうは言ってもな…
「とにかく、私は虎龍にその力を与えた。 理由は王の完成の為に…」
「瑠羅に王を完成させる為か?」
「違うよ、瑠羅がその力を解析し、新たな力を作ろうとする間に、銃魔を誕生させる為」
「だが、それでは虎龍に入れた能力は…」
「瑠羅も使いようだよ…?」
………?
「瑠羅の力を利用してで銃魔に能力を移す。 それで私の王は完成する」
何だろう…この違和感…
「………嘘だな」
すぐ傍で、その声は聞こえた…
「何もかもが嘘だ…、王にその力を与えたいならば共に居た方が良かった、そして貴方は瑠羅の事を見下している。 貴方の言った理由はデタラメだ」
エクス……? 何で…
「……何時から居たの?」
「さっきだ、紬と共に…初星と共に入って来た」
って事は、今までの会話は全て聞かれたという事か…
「……この子を殺すの?」
…そうか…、あれはエクスの子ども…『ナイフの世界』を受け継いでいる可能性が…
「………出て行け…」
「え?」
「今すぐ立ち去れ!!! 今回だけは見逃してやる!!! 三人とも…いや、その子どもを含めて四人とも、立ち去るんだ!!!」
エクスが叫ぶ………この部屋は音漏れ防止されてるよな…頼むぞ…
「待ってください!! エクス…」
零がエクスに近寄ろうとした時、数十本のナイフが瞬時に現れ、道を塞ぐ…
「お前には、和継を育てる義務が有るだろ? 此処で死ぬな…」
………そういう事か…
「それが、お前と和継の為…か……」
「………そうだ」
恐らくエクスは、必死に耐えているのだろう…
俺達は、立ち去る事を選んだ…

「どういう事ですか?」
『忘れられた村』に着いて、零が聞いてきた…
「何がだ?」
「これがエクスと和継の為って事がです」
零は知らないのか…? それとも考えて無いのか…?
「エクスにはね、『ナイフの世界』っていう特性があるの」
「それは分かります、でも…」
「ナイフの世界は、一人しか使えないと言われている… 恐らくエクスの血縁者は既に和継しか居ないのだろう…これでも分からないのか?」
『ナイフの世界』は一人しか持てない、それはその特性の性質から考えられる…
「それよりも俺は、世羅に聞きたいな…本当の理由を…。 さっきはエクスの前だから嘘を言ったのなら、今度は真実を話してくれるよね?」
世羅の理由…俺はそれをどうしても知っておく必要があると思っていた…
「うん、途中まではあの時話したのと同じ。 だけど最後の部分は、エクスの指摘が有ったとおり、真っ赤な嘘なんだよ」


虎龍に力を入れた理由は
彼の近くにある筈の存在の監視
彼を王にする為
村を守る為

そして…

大地の壁を破壊する為に…


「……壁を破壊する…どういう事だ? あの特性が…」


コピー能力は、知と発の力
カリスマ能力は、束と徳の力
不老感染は、永と生の力
この三つを混ぜた力で、一時的に壁を壊し、正しい世界に戻る…


「そんな事が、本当に可能なのか?」


実際にやってみないと分からないよ、それでも私はそれが出来ると思っている…
いや、既に決定してるんだ…
少し我慢する必要は有るけど、虎龍が壁に穴を開けて通るのは決定している…


「我慢……虎龍を瑠羅に攫わせた事に関係してるな…?」
「ついでに言うと、銃魔の存在もそれに関わるよ、ディア、同幻、オーロラ、戦華も…そして…私達も…」


-STORY-物語 始まりの書 十二章 王の強奪 ep.9
紬 零 世羅
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